| 「風のたわむれI」は1997年12月に、長崎県の鎮西学院高等学校吹奏楽部のメンバーのために作曲され、その年にアンサンブル・コンテストで演奏されました。 3本のフルートに与えられた役回りは、バレエや演劇における踊り手(または演じ手)であり、打楽器は舞台美術や照明に相当するといえるでしょう。 この点を理解しておけば、ふたつのグループ間のバランスやコントラスト、 それぞれのキャラクターづくりなどの方向が明確になると思われます。 あとは、演奏者の皆さんが、この音楽を自由な、豊かなイメージで、踊りとして、 あるいは芝居として演出して下されば結構です。 各楽器の性能、性格の関係で、どうしても打楽器の方がバランス的に優位に立ちやすいのですが、これはステージ上の配置の工夫である程度改善できるでしょう。 スネア・ドラムはミュートすることをおすすめします。 また、フルートはほとんど3本一緒に動きますから、3人の表現を統一し、バランスに配慮して一体感を強めておくことが、打楽器とのアンサンブルの面でも大切なポイントになるに違いありません。 冒頭、1stフルートにある"set in the distance"は、「遠くで」という指示です。 ステージの袖または裏、それが難しい場合は、ステージ上の他の奏者から出来るだけはなれた位置で演奏してください。位置だけでなく、「遠くから聞こえてくる」イメージの音色や表現も重要です。"set ordinarily"は、「本来の位置での演奏」です。この曲が音量や音色だけでなく、音の遠近感も利用して響きを創造しようとしていることが、この点からもおわかりいただけるでしょう。(後藤 洋) ●作曲者プロフィール 後藤 洋(ごとう よう) 1958年秋田県生まれ。山形大学教育学部特設音楽科卒業、東京音楽大学研究科終了。 作曲を池辺晋一郎、金田成就の両氏に師事。 吹奏楽と音楽教育の分野を中心に作曲・編曲があり、音楽評論家としても活躍中。 また近年は、海外で出版される吹奏楽のレパートリーの研究、紹介にも力を注いでいる。 全国各地の音楽教員や吹奏楽指導者の研究組織に講師として招かれ、 その教育的見地からの多くの提言や指導に、現場からの支持は厚い。 主な作品に「即興曲」(1976年吹奏楽コンクール課題曲)、「カドリーユ」(1983年吹奏楽コンクール課題曲)、「風の詩」、「輝く日への前奏曲」、「ルクス・エテルナ」(ブレーン株式会社)、「Wings」など。日本管打・吹奏楽学会常務理事。日本バンド・クリニック委員会顧問。  |